ゲームとルール(メカニクス):創発型ゲーム | synclon blog
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2015年11月29日更新
このページで伝えたいこと(結論)
「創発×議論」「エンタメ×議論」を考えていくために、書籍「ゲームメカニクス」を参考に、ゲームとルールの関係について紹介します。
結論から言いますと…
創発型ゲームは「ルールが少なく」「ゲーム要素間の相互作用が多数あること」がポイントのようです。
ゲーム要素とは主に、「ゲームのルール(ゲームメカニクス)」「プレイヤーによる選択」「偶然性」の3点が大切です。これらの相互作用によって、ゲームを複雑なものにし、予測不可能なものにしていきます。
ただし、ゲームプレイヤーにとっては、個々のゲームメカニクス(ルール)は簡単に理解することができ、これらのメカニクスがもたらす効果を暗算できることが望ましい。
gamemechanicsbook タイトル ゲームメカニクス
著者名 アーネスト・アダムス(著),ヨリス・ドーマンズ(著),ホジソンますみ(翻訳),田中幸(翻訳),バンダイナムコスタジオ(監修)
出版社 ソフトバンククリエイティブ
発売日 2013.03.28
内容紹介 いかにメカニクスをデザインし、テストし、そしてチューニングするか。時代に左右されない、根源的なゲームデザインの原則と実践を伝授。
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【A】はじめに
(A1)ゲームメカニクスという言葉
ビデオゲームのゲームデザインコミュニティでは、一般に、ゲームルールよりゲームメカニクスという言葉が好まれる。なぜなら、ルールはプレイヤーが認知している印刷されたインストラクション(説明)だと考えられている一方で、ビデオゲームのメカニクスはプレイヤーから隠されており、ソフトウェア上の実装でもプレイヤーに直接的なユーザーインターフェイスを与えられていないからだ。p4
(ちなみに)最も影響力があり、ゲームの多くの側面に影響を与え、「単一のゲーム要素のみを制御する程度の重要度の低いメカニクス」と相互作用するメカニクスをコアメカニクスと呼ぶ。p4
(A2)予測不可能性
ゲームはある程度予測不可能であるべきだ。予測可能なゲームは一般的に言って、あまり面白くない。p2
ゲームを予測不可能なものにする方法は「偶然」のほかに「プレイヤーによる選択」と「ゲームのルール」によって生み出される複雑なゲームプレイである。p3
複雑なルールはゲームを(少なくとも人間には)予測不可能なものにする。複雑なシステムは、通常、多くの相互作用の部分を持っている。個々の部分は単純で、その挙動は理解しやすく、ルールもシンプルかもしれない。しかし、すべての部分が結合されたときの挙動は、非常に驚くべきものになり、予見することは困難である。p3

【B】創発型ゲームと進行型ゲーム
(B1)創発型ゲーム・進行型ゲームとは?
「創発型」と「進行型」のカテゴリーが最初に紹介されたのはゲーム学者ジェスパー・ジュールによる論文“The Open and the Closed:Games of Emergence and Games of Progression(オープンとクローズド:創発型ゲームと進行型ゲーム)”(Juul2002)によってである。p25
「創発」という言葉が使われるのはゲームのチャレンジとイベントの流れが事前に計画されているのではなく、プレイする間に現れて出てくるからである。創発とは、多くのルールの潜在的な組み合わせによって生成されるが、これはボードゲーム、カードゲーム、ストラテジーゲームだけでなく、一部のアクションゲームでも見られる。p25
創発型ゲームはプレイ中に実にさまざまな構成や状態に変化する。可能性のあるチェスの駒の運びによってそれぞれ異なるゲームの状態が作られるのは、ポーン(歩)の動きが1マス違っても決定的な違いが生まれるからだ。p26
チェスのゲームには、一般的に、序盤、中盤、終盤の3つのフェーズがあると見なされているが、それでも、ルールはゲームを通して変化しない。この現象はチェスのルールそのものによる創発の特性であり、進行のメカニズムによって人為的に構造が作られたわけではない。p46
進行型ゲームは、多くの事前設計されたチャレンジを提供するゲームだ。こうしたチャレンジはデザイナーが順番に並べたものである。プレイヤーが一定の順番でしかイベントに遭遇でいないようにレベルをデザインすることで、プレイヤーが遭遇するチャレンジを決定している。p26
テトリス(創発型ゲーム)で、可能性のあるすべての落下ピースの組み合わせと順番をプログラムする人はいない(進行型ゲームのようにはつくらない)。このゲームではランダムにピースを落としていくだけである。
テトリスのチャレンジは、ピースのランダムな落下順序と、それに備えたプレイヤーによる事前の対処アクションとの組み合わせによって生まれている。p48

(B2)ゲームで使用される5種のメカニクス(p7,8)
一般にゲームで使用されているメカニクスは5種類ある。そのうち(1)物理(2)内部経済(3)戦術的な操作(4)社会的インタラクションの4種は創発型ゲームに大きく関わるメカニクスであり、(5)進行型のメカニズムは進行型ゲームを生み出すメカニクスと関係が深い。
(1)物理
→ゲーム世界における物理(運動と力の科学)を定義することがある。ゲーム中のキャラクターの移動、ジャンプなど。ゲーム要素の座標、移動方向、要素と要素の交差判定と衝突判定。
(2)内部経済
ゲーム要素の収集、消費、交換といった取引のメカニクスは、ゲームの内部に経済活動を構築する。「お金、エネルギー、弾薬」などのアイテムだけでなく、ヘルス、評判、魔力といった抽象的なものも扱う。例えば、ゼルタの伝説シリーズにおける、リンクのハート(彼の生命エネルギーを可視化したもの)も内部経済の一部。
(3)戦術的な操作
戦術的ゲームは、攻撃や守備の優位性のために、マップ上のゲームユニットに配置を行うメカニクスを持つことができる。多くのゲームでは、チェスのように、タイル(マス目)でユニットの座標を制限している。
(4)社会的インタラクション
プレイヤー間の協調アクション、同盟、競争
最近のオンラインゲームでは、友人にプレゼントを贈ったり、ゲームへ招待したり、その他の方法で交流を持ったりすることに対してリワード(報酬)を提供するメカニクスを備えたものが多い。
(5)進行型のメカニズム
プレイヤーがゲーム世界をどう進んでいくかが決められている。主人公は誰かを救ったり、悪者の親玉を倒して、特定の場所へたどり着いたりする。プレイヤーの進行状況は、特定のエリアへの立ち入りをブロックしたりアンロック(解除)したりする数多くのメカニクスによって厳重にコントロールされている。レバー、スイッチ、特定のドアを破壊できる魔法の剣など。

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参考:書籍「ゲームメカニクス」p9(表をつくりなおしました)

【C】創発型ゲーム、ルール、確率空間
(C1)「3目並べ」と「4目並べ」のルール比較
ルールを見ただけでは、そのゲームプレイの種類や品質を決定づけることは(不可能ではないにせよ)困難である。「3目並べ」と「4目並べ」のルールを比較してみよう

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外部リンク:ウィキペディア(四目並べ)

<3目並べのルール>
3×3の格子上でゲームを遊ぶ。
プレイヤーは交互にマス目を埋める。
各マス目は1回しか埋められない。
先に(縦・横・斜めいずれかの形で)3つのマス目を並べたプレイヤーが勝ちとなる。
<4目並べのルール>
7×6の格子上でゲームを遊ぶ。
プレイヤーは交互にマス目を埋める。
各マス目は1回しか埋められない。
各列の、空いている一番下のマスから積み重ねることしかできない。
先に(縦・横・斜めいずれかの形で)4つのマス目を並べたプレイヤーが勝ちとなる。
この2つのゲームの間には、ルールの違いはほんのわずかしかない。ゲームのルールを理解するのに求められるメンタルな努力の量に比べると、ゲームプレイでの違いは莫大なものとなる。p30
熟練プレイヤーが対戦すると「3目並べ」では引き分けになってしまうだろうが、「4目並べ」では白熱した対戦になるだろう。p30
「3目並べ」と「4目並べ」とでは、ゲームプレイの複雑度には飛躍がある。これによって、プレイヤーは何度遊んでも同じプレイにならないと確信できる。何度遊んでも初めてプレイした時と同様に、結果が予測不能であることで、ゲームの魅力が増す。p40

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参考:書籍「ゲームメカニクス」p41(グラフをつくりかえました)

(C2)確率空間
創発型ゲームは、比較的少数のルール、ゲーム要素間の多数の相互作用、および大規模で広範囲な確率空間が特徴である。一方、進行型ゲームは、ルールが比較的多く、ゲーム要素間の相互関係は少なめで、通常狭くて深い小さめの確率空間が特徴であるp45
ゲームの研究では、取り得る状態の数が非常に大きいとき、これらを集合的に確率空間と呼んでいる。確率空間は、現在の状態から到達可能なすべての状態を表しており、広さあるいは深さを伴ったものと見なすことができる。
■確率空間が広い場合:通常、プレイヤーが多くの選択肢を持っていることを意味する。
■確率空間が深い場合:プレイヤーが選択した後で、多くのさまざまな状態に達することができる。

【D】「離散的メカニクス」とプレイヤー
ゲームメカニクスの別の区分として「継続的メカニクス」と「離散的メカニクス」がある。
(D1)メカニクスの別の区分(p10)
(1)継続的メカニクス
現代のゲームは、プレイのスムーズかつ継続的なフローを作り出す緻密なメカニクスを用いて、「物理(タイミングとリズムを含む)」をシュミレートする傾向がある。ゲームオブジェクトを0.5ピクセル左か右に寄せることができ、それがジャンプの結果に大きな影響を持つ場合もある。最大の精度を得るために、物理的挙動は、高精度の少数値を用いて計算される必要がある。
(2)離散的メカニクス
例えば、「内部経済」は離散的であり、整数値で表現される傾向がある。ゲーム中に、パワーアップを半分だけ拾うことは、普通はできない
→(例)マリオのキノコを半分だけ拾うことはできない
離散的では、プレイヤーは先を見越して動きを計画し、複雑な戦略を立てて実行することが可能である。離散的メカニクスとプレイヤー間のインタラクションは、精神的/戦略的なものとなる。p11
(D2)ゲーム:シヴィライゼーションの例(p31)
『ゲーム:シヴィライゼーション』を調べていくと、そのメカニクスのほとんどが離散的であることが分かる。このゲームはターン制であり、ユニットや都市の位置はタイル上に制限され、攻撃力と防御力は整数で表されている。

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画像出典:グーグル検索
これらのメカニクスは離散的であるので、個々のメカニクスは簡単に理解することができる。基本的に、プレイヤーはこれらのメカニクスがもたらす効果を暗算することができる
それでも、シヴィライゼーションの確率空間は巨大である。比較的シンプルな離散メカニクスを用いて莫大な多様性を生み出し、戦略的なレベルでプレイヤーがゲームとインタラクトできる、優れた例である。
『ゲーム:StarCraft』も、シヴィライゼーションと同様、個々のゲーム要素はかなりシンプルなものであるが、要素間に数多くの相互関係があって、数多くの興味深い創発型の特性を有するゲームメカニクス体系を築き上げている。

【E】秩序と混沌の間に創発がある
「秩序」と「混沌」の間には「周期系」と「創発系」の2つの段階がある。「周期系」は連続的かつ予測が容易な順番で明確に決められた数の段階を経て進展する。p50

「創発系」は「周期系」より秩序だっておらず、混沌としている。創発系は安定したパターンを持った振る舞いを示すが、あるパターンから別のパターンに突然切り替わることがある。p50

気象系がこの好例だ。ある地域に限って言えば季節のサイクルは全体として基準があるものの、特定の年の天候を予測するのは難しい。大気圧、海水温度、気温による複雑な相互作用があるため、次にひどい霧が降りる日にちを言い当てたり、冬の積雪量を正確に予測したりするのはほぼ不可能だ(統計によって経験則を作ることはできるが、毎年正確であるとは限らない)。

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<秩序(ロウ)>
進行型ゲームは、チャレンジやアクションの潜在的なシーケンスがすべて予測できるため、秩序系である。プレイヤーは次に何が起こるか分からないが、デザイナーならメカニクスを見れば確実に予測できる。p51
<周期>
ボードゲームでは、順番にターンを持たせることで、かなり巧妙な周期系を構築している。p51
<創発系の振る舞い>
『ゲーム:シヴィライゼーション』における明確な進行フェーズは、ゲームにおける創発系の振る舞いを明確に示す良例p51
<混沌(カオス)>
ダイスや乱数生成、さらに他のプレイヤーも混沌を生み出す要素となる。p51

創発型ゲームをデザインするには、ゲーム全体の振る舞いが創発型カテゴリーのどこかに該当するように、これらの要素すべてのバランスをとる必要がある。

【F】さいごに
■「創発型ゲーム」と「進行型ゲーム」がある。
■「創発型ゲーム」は『ルールが少なく』『ゲーム要素間の相互作用が多数あること』により、複雑度(確率空間)が上昇する。
■ルールの複雑度が一定のポイントまで到達すると、飛躍的にゲームプレイの複雑度が上昇する。
■ゲームプレイヤーにとっては、「個々のゲームメカニクス(ルール)」は簡単に理解することができ、これらのメカニクスがもたらす効果を暗算できることが望ましい。そのために、離散的なメカニクスがよい。
■「進行型ゲーム」は、『ルールが多い』が『ゲーム要素間の相互作用は少数であること』により、複雑度は低い。
■「進行型ゲーム」は、デザイナーが事前にチャレンジを設定して提供するため(プレイヤーは次に何が起こるか分からないが)デザイナーならメカニクスを見れば確実に予測できる。
■複雑度は「秩序(進行型ゲーム)」→「周期系」→「創発系」→「混沌」の順で大きくなる。
このページでは触れていませんが…
多くのゲームでは、創発型と進行型の両方の要素を兼ね備えているようです。
創発型のレベルやミッションによって、レベル間の小さなストーリー進行への扉が開かれ、その後に別の創発型レベルが続くといった具合だ。p42
議論に応用するには、どのようにしたらいいのでしょうか。
■議論のロードマップが進行型(秩序)でしょうか。
■ある程度の議論を終えたところで、論点を意識的に決定し、議論を次のステップへ進ませることが、進行型でしょうか。
■論客が順番に発言していく等のルールによる「周期」が必要なのでしょうか。
■創発系議論においては、議論の状態(パターン)から、別の議論の状態(パターン)へ、突如変わっているのかもしれません。
■ダイスに変わる「偶然性」を、周期系議論へ投入すべきなのでしょうか。
ひょっとすると、議論のルールを考えていくのではなく…
ゲーム性のある議論においては、ファシリテーターのメカニクス(ルール)を検討していくことがよいのかもしれません。ファシリテーターは、論客のコメントにどのように応じるべきか。
論客は自分自身のコメントに対するファシリテーターのコメントを、ある程度の推測(暗算)ができる方が、論客(議論プレイヤー)にとっては楽しく議論ができるのかもしれません。
論客Aのコメントをファシリテーターは受けて、ファシリテーターは論客Bへコメントをする。「論客A」と「メカニクス(ルール)としてのファシリテーター」と「論客B」の相互関係によって、議論に複雑性を高めていく。
「論客A→F→論客B→F→論客A…」このような周期系議論に、ダイスに変わる「偶然性」を「論客C」が投げ込むとおもしろいかもしれません。
皆様も考えてみてくださいネ…

<ファシリテーション・メカニクスページはこちら>

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▶ファシリテーション・メカニクス

<議論ページはこちら>
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▶議論316:【Labs】ファシリテーション・メカニクス